風の噂で、知人が結婚したと言う話を聞いた。
数年前にパートナーが突然亡くなり、お仕事が出来なくなってしまった。
少しお休みした後に復帰されたのだけど、目に見える世界はこれまでと変わってしまった。
どんなに苦しいことだろうと考える。消えたくても死ねない、ってのは。
当初は周りの人たちも気遣ってくれただろうけれど
同じ経験をした人以外、誰もその辛さを本当には理解できないし
他人の時間は他人の時間として流れていくから、いつまでも優しくはしてくれない。
同じところにとどまり続けるのがどれほど辛い事だろうか、とはなかなか思ってもらえない。
想像力というのは、他人が感じている事を、自分の事として感じられるかどうかだから。
それは毎日毎日傷ついて生きる様なもので、夏の暑さを毎年忘れるみたいに、
生き延びていく為の防衛装置として想像力にはリミッターがかかっているんだと思う。
辛い時は、辛い事が続く。
仕事は上手く行かず、周りも次第に離れていく。
状況は変わり、今まで出来た事も上手く行かなくなっていく。
今まで自分がしてきた事が全部自分に返ってくる。
今までのやり方では切り抜けられない時が来る。
元々上手く行ってたんじゃない、なんとか形になっていただけだと。
辛い時に辛いのは、今までの自分が全部間違っていた様に思うから。
最後にすがれるものは自分が歩いてきた道のりだけなのに、それすら間違っていたなんて。
だけどね、そういう局面て皆んなに訪れるものではないと思うんだよ。
その人だけに与えられた瞬間があって、運命に負けずに変わる事だってできるんじゃないかな。
今まで人の気持ちを顧みずにやって来なかったよな、でもここからはまた新しい日が始まるよって。
今は夜明け前の一番暗い時なんじゃないかって思う。
最終的に仕事を辞めることを選んだ。
誰かが言った。逃げたなと。
一体そいつに何が分かると言うのだろう。
それから時間が経って思うのは、悲しくて乗り越えられない事もある、ということだ。
乗り越えなくていい、とは思わない。
というのは、乗り越えなくてもいい、って書いて、違うなって思ったから。
乗り越えられないまま、毎日は続いていく。
大体のことは、良くないか最悪かのどちらかで、時々それを忘れられる日がある。
ある時を境に人生のトーンが、これまでより色あせて、沈んだ色合いになったとしても
その中にも綺麗だと思う色があって欲しいし、あると思う。
止まない雨はあるし、明けない夜もある。
でも傘を差してくれる人や、明かりを照らしてくれる人もいる。
おめでとうございます、幸せになってくださいね。